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TLOS映画化決定!
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    ついに『 The Land of Stories 』シリーズの 「 The Wishing Spell 」の実写映画化が決まりました!!

    FOXさんと『ナイト・ミュージアム』やネトフリの人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』のショーン・レヴィ監督がチームを組むようです。(クリスはエグゼクティブ・プロデューサーになるのかな)



    元記事はコチラ

    「Wishing Spell」の中で、本に鉛筆が吸い込まれていくところがすごく好きなので、映像で見るのが楽しみです。


    そんなTLOSシリーズの5巻もペーパーバックが発売されています





    そして来月はTLOS最終巻の発売です!



    夏に向けて楽しみがたくさんですね☆
    | hanno | 19:53 | comments(0) | - | - |
    【TLOS3ブログ読書会】chapter19 ver.1.0
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       冷たい取引



       兵士たちは凍てつく風に凍えていた。天候があまりに酷くなったため、馬は置いて兵士たちは深い雪を歩いて進むことになった。彼らは何時間も北の険しい山を、はっきりした行き先も到着の予定時間もわからないまま登っていった。

       「あとどのくらいなんだ?」マルキ将官は答えを求めた。

       「光が見えたら到着したことがわかるだろう」マスクマンは後ろの男たちに向かって言った。

       二十人で出発した大陸軍の兵士は、十人ほどに減っていた。マスクマンが寒さの中案内する間に、多くの兵士が脱落していった。数百ヤードごとに一人が悪天候で気が遠くなり、雪の中へ消えていった。それでも進み続けるように命じられていたので、倒れた者は置き去りにされたのだ。

       マルキ将官とバトン大佐はユニフォームの上に分厚いコートを着ていた。しかし後ろで弱っている兵士たちはあまり防寒効果のないものしか与えられなかったにもかかわらず、動きが遅いと責められた。マスクマンは防寒に古いぼろぼろの毛布しか持ってなかったが、誰よりもしっかりと歩いていた。彼はこの山々に何度も挑戦したことがあったのだ。

       「あなた方はあまり寒さに慣れてないようだ」マスクマンはくすりと笑った。

       「しびれが切れそうだ」将官は脅した。

       「心配なく。あと少しだ」マスクマンは断言した。

       すぐに彼の言っていた北の光が見えてきた。暗い空を緑の影で照らし、氷河の頂きの上に円を描いていた。氷河にたどり着く頃には、一行は将官と大佐を入れても六人だけになっていた。マスクマンは残っている者たちを二つの氷河の間の空間、そして巨大な氷の迷路へと連れて行った。彼らは氷河の間をジグザグに進み、やがて広大なクレーターへと出た。

       「皆さん、雪の女王の隠れ家へようこそ」マスクマンが言った。

       兵士たちは困惑した様子でクレーターを見渡した。

       何本もの氷の柱がクレーターを囲い、凍った湖は床のようだった。そして上の山からは凍った滝がこぼれ落ち、巨大な氷の玉座のまわりに広がっている。雪の女王は両脇に信頼のおけるホッキョクグマを置き玉座に座っていた。彼女は長い毛皮のコートを着て、雪結晶でできた王冠を頭に載せ、空の眼窩には布が巻かれている。雪の女王とホッキョクグマは、まるで兵士たちが到着するのを待っていたかのように、妙に静かだった。

       「またマスクマンが戻ってきたね」雪の女王はしわがれた声で言った。「待っていたよ」

       「これは、女王さま」マスクマンは軽くお辞儀をして言った。「久しぶりだが、相変わらず冷ややかですね」

       「おだてても無駄だよ」雪の女王は言った。「取引をしに来たのなら、私が欲しい物はわかっているな」

       「ええ、わかっています」マスクマンは言った。「前回来た時、あなたは例のものと交換する物をはっきりさせました。そして嬉しいことに、やっと取引をするために戻ってきたのです」

       将官は急に張りつめた。「取引のことなど言ってなかっただろう」彼は嘲るように言った。

       マスクマンは落ち着くように身振りで伝えた。「女王さま、こちらは大陸軍のマルキ将官です」

       「知っておるわ」雪の女王はぴしゃりと言った。「将官と陸軍がこの世界に来ることは、お前が生まれるずいぶん前からわかっていた」

       将官はこれでなぜか落ち着かなくなり、彼は兵士たちに非常待機するよう合図した。しかしマスクマンは、これは良い知らせなのだと言った。「すばらしい。それではドラゴンの卵と引き換えに、あなたがずっと欲しかったものを彼が与えます」

       「彼には可能かもしれないが、約束を果たすと信頼できるかはわからない」雪の女王は言った。「将官の未来は確実なことと不確実なことであふれている。ずっと前に彼と陸軍が国を一掃しすべて征服したことは見えたが、妖精たちに立ち向かっているのは見ていない。もしこの世界を手に入れたければ、これからしようとする取引の信頼が必要だろう」

       「それで取引とは何なんだ?」将官は彼女に近寄りながら訊ねた。

       雪の女王が笑うとギザギザの歯がむき出しになった。「何年も前、私はノーザン王国の女王だった。この世界を征服するために私のドラゴンの卵が欲しいなら、成功したあかつきにはノーザン王国を私に戻すと約束するべきだな」

       このひと言で将官はカッとなった。「ちょっと待ってくれ、女王さん」と彼は雪の女王に言った。そしてマスクマンの衿を掴むとクレーターの脇の柱に向かって投げつけた。

       「取引のことなんて何も言ってなかっただろ!」と彼は小声で言った。

       「将官、私を信じるんだ」マスクマンが小声で返した。「闘いに勝てる唯一の方法なんだ。雪の女王と取引をするんだーー見返りに何を約束しても関係ないーードラゴンを手に入れれば怖いものなしだ!彼女でも何でも邪魔なものは消せる」
        
        将官は考え直したが、彼の目から怒りは消えなかった。「よかろう」と彼は言った。そして雪の女王の方を向いた。「ではドラゴンの卵をくれるのなら、この世界を征服した時に北部は再びあなたのものになると約束しよう」
       
       雪の女王は低くしゃがれた声で祝うように笑い出した。「それは嬉しいね」彼女は言った。「申し出は受け取るよ。だが警告しておこう。あんたが約束を果たしたらすばらしい未来が見えるが、裏切った時はあんたの任務は焼き殺されて終わることになるだろう」

       将官の左目はピクピクし始めた。明らかに雪の女王は見えてもない未来で、彼を操ろうとしていたのだ。将官は黙って促しているマスクマンをちらりと見た。

       「わかった」将官は言った。「契約成立だ」

       兵士たちは下の方から轟音を感じた。足元の氷からは泡が見え、何か大きく丸みを帯びたものがゆっくりと湖の深いところから浮かび上がってきた。そしてドラゴンの卵は凍った水面の下に姿を現した。

       マルキ将官は部下の方を向いた。「突っ立ってるんじゃない!手に入れるんだ!」と彼は命じた。

       兵士たちは卵のところに行くと、ライフルの背で氷を割った。マルキ将官とバトン大佐はそこから離れて立っていた。一人の兵士が割れ目から冷たい水へ落ちた。雪の女王は笑い彼らが卵を手に入れる様子を楽しんでいた。男の落下で大きな穴があき、ドラゴンの卵はすぐ手が届く距離まで流れてきた。
       
       「動くな!」とマスクマンが叫び、残りの二人の兵士は立ちつくした。マスクマンは慎重によつん這いになって氷の床を滑り、ドラゴンの卵を水から取り出した。「ああ、冷たい!」と彼は金切り声を上げた。そしてジャグリングのように卵を扱うと、ぼろぼろの毛布に包んだ。卵はとても冷たかったので、火傷したのだ。

       ドラゴンの卵はマスクマンの頭の二倍の大きさだった。通常の卵の形をしているが、石炭のようなざらざらした黒い殻で覆われている。長い歳月で得たヒビは金で保護され、悪くなった歯のようだ。マスクマンは初めての子供を抱いているかのように誇らしげに卵を見た。長い間この時を夢見ていたのだ。

       マルキ将軍は即座に近づき、彼の手から卵を奪った。「素晴らしい」と彼は言い、水晶玉の中に将来を見るかのように、好奇心に満ちた目で卵を見た。「バトン大佐、マスクマンを撃ってくれ。彼の助けはもう不要だ」

       バトン大佐はコートの内側から銃を取り、マスクマンに向けた。

       「ちょっと待ってくれ」とマスクマンは言い、両手を上げた。「殺せないよ!まだ私が必要なんだ!」

       「卵は手に入れたから、お前のたわ言で時間を無駄にするつもりはない」と将官は言い、大佐に撃つようにうなずいた。

       「でも誰かが卵の世話をしないとーーあなた方がどうやってドラゴンをちゃんと孵化させ育てるか知らないだろう」とマスクマンは言った。

       「どうして詳しいんだ?」将官はぶっきらぼうに訊いた。

       「私は何年もこの卵を手に入れようとしてきた」マスクマンは言った。「だからドラゴンのことなら何でも知ってるんだ!これから我々は卵をとても熱いところに入れないといけない。熱ければ熱いほど、早く強いドラゴンに育つーー共に動くなら、とても熱いところに心当たりがある」

       マルキ将官は半分うめき声のような、半分ため息のような声をもらした。彼は牢獄を後にしてからずっとマスクマンを外したいと思っていたのだが、もう少し待つことにした。バトンに向かって首を横に振ると、彼は銃を下ろした。

       「マスクマンは再び役に立つと証明したようだ」将官は言った。「きちんと卵を孵化させドラゴンを育てるまでは生きてもいいだろう。ではこの氷の山からだしてもらおう。私のイライラが限界に達する前にな」 
       
       マルキ将官は彼をじっと見てから、入ってきたクレーターの開けた方へ向かった。バトン大佐と残りの二人の兵士は後に続いた。マスクマンは鼓動を静めるために胸をさすったーー生きていたかったら、この先できる限り役に立つ存在だとしておかなければならないだろう。

       「ありがとう、女王さま」マスクマンは雪の女王に言った。彼はお辞儀をすると急いで仲間の元に追いついた。彼らが去った途端に、乾いた笑いが雪の女王からもれ、谷間にこだました。

       「何がそんなにおかしいのですか?」左側にいたホッキョクグマが訊いた。

       女王の顔に意地の悪い笑みが広がった。「これからマスクの友人に起こることが急に見えたよ」と彼女は言った。

       「何が見えるんですか?」右側のホッキョクグマが訊いた。

       「彼のマスクはとても長い間うまく正体を隠してきた」彼女は言った。「しかし週の終わりまでに、彼が最も恐れていることが明らかになるんだ。一番秘密を守りたかった人物に正体がばれる時にな」
       

      | hanno | 20:20 | comments(2) | - | - |
      【TLOS3ブログ読書会】chapter18(後半)ver1.0
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         「いい考えがあるわ。もっと近くで聞いて」とアレックスが言い、注意を集めた。「大陸軍が最初にどこをどうやって攻撃するかわからないけど、あり得そうなところを推測しないといけないわ。皆さんには、まず部隊の指揮官に一筆書いて、兵を二つに分けるようにして欲しいの。半分の兵はそれぞれの王国に残って、無防備なところをないようにしましょう。他の半分は、見えないところならどこでもいいから、隠れていて。あたしの合図があるまで出てこないように」

         「でもどうして兵を分ける?」ザンタスが訊いた。

         「こうすると攻撃されても、どの王国も無防備にならないのよ」アレックスは説明した。「そしてもし、ある王国が攻撃されたとしても、その兵は全滅しないわ」

         アレックスは妖精たちの方を向いた。「あなた達には兵と一緒に王国を守って欲しいの」彼女は言った。「ロゼッテはコーナー王国、スカイリーンはノーザン王国、ザンタスはチャーミング王国、タンジェリーナはイースタン王国、バイオレッタとコーラルはボー・ピープ共和国。マザーグースとエメラルダは妖精王国に残って、フェアリー・ゴッドマザーを見ていてちょうだい」

         アレックスは作戦の締めくくるために、他の者たちへと向き直った。「コナーとあたしはトロブリンとエルフのところに行って、協力をお願いするわ。彼らを勧誘したらすぐに残っている兵に、半分は家に、もう半分は隠れているよう指示して、大陸軍との闘いに連れて行く」

         誰もがこの作戦を頭の中で注意深く繰り返した。完璧な作戦ではないかもしれないが、これが唯一の作戦だった。

         「私たちはどうなるの?」シンデレラが訊ねた。「家に帰るの?それとも妖精王国に残るの?」

         「どちらでもないよ」コナーが言った。そしてアレックスの隣に立った。「大陸軍はあなた達を見つけたら殺すだろうーー彼らは皇族や貴族を殺してきたからーー彼らにとって死が唯一の降伏なんだ。ずっと移動を続ければ、見つかることはない。グラニー号のような飛行船に全員乗るのを勧めるけど、奴らに見つかったら間違いなく撃ち落とされる」

         「じゃあどうすれば見つからずに移動を続けられるかしら?」アレックスが訊いた。

         彼女の言葉でピンときた。コナーは何かそれに関係することを最近聞いていたのだ。ただ考えるしかなかった。墓地でグリム兄弟の話を立って聞いた時のことから思い起こすと、答えが浮かんだ。グリム兄弟は警告しただけではなく、計画も用意してくれたのだ。

         「わかった!」コナーが言った。「『秘密の城』の話のように、魔法の小道に連れていくんだ!あの道はヘビのように王国中をくねくね曲がっているから、二度と同じ方向に行かないし、跡を残さない!」

         「素晴らしい案だわ!」アレックスが言った。「知ってる人にしか見つけられないってことね!陸軍が小道のことを知らなければ、見つけることはない」

         コナーはアレックスに一歩近づき、誰にも聞こえないように何かささやいた。「アレックス、小道は作れそう?」彼はアレックスが魔法で出来なかった場合に、皆をあまり期待させたくなかったのだ。

         アレックスは深呼吸した。「ええ」彼女は言った。「できるわ」そして何人かが座っている階段を見た。「レッド、あなたが乗ってきた馬車を使うわ。とても質素で皇族の紋章もないから」

         レッドは口をとがらせた。「思い出させないでよ」

         アレックスは公式の服や王冠、宝石といった王や王女が身につけているものを見た。「もう少し非公式に見えるように、身軽になってもらったほうが良さそうね。宝石をつけたり、護衛をつけたり、皇族に見えるようなことはできないわ」

         「でも護衛なしでは小道を勧めない」スノー・ホワイトは言った。

         「何かしらの護衛が必要よ」スリーピング・ビューティーが言った。「その道が私たちと同じように扮装してるとしてもね」

         アレックスは考えるために空を見上げ、この日初めて大きな笑みを浮かべた。「完ぺきな人たちを知ってるわ」アレックスは言った。彼らはちょうど真上を飛んでいた。アレックスが微笑んでいるものを見るために、他の者たちも空を見上げた。

         六羽目の白鳥がやっと妖精宮殿に戻ってきて、ホールに着いた。皇族や妖精たちはジャックとゴルディロックスが白鳥の背中から下りてくるのを見て驚いた。アレックスが密かに白鳥の一羽に逃亡中の友人を見つけるよう送り出していたのだ。

         「あの人たちを呼んだの」レッドは階段の上から大声で言った。

         「ええ、二人ほど友人が増えても問題ないと思ったの」アレックスが言った。「でもぴったりの任務ができたわ」

         二人は気まずそうにホールの皇族たちに手を振った。皇族たちが魔女を倒すのに貢献したお礼に全て免罪にして一年も経ってなかったーーそしてそれから、今は手を振っているものの、ジャックとゴルディロックスはどの王国でもいくつか罪を犯していた。

         「やあ、皆さん」ジャックが言った。「何の集まりかな?」

         「アレックス、手紙を受け取ったわよ」ゴルディロックスが言った。「間違えて送られてきたのかと思ったけど、白鳥がとても説得上手だったの」彼女とジャックは腕を上げて、旅をしぶって噛まれた跡を見せた。

         アレックスとコナーは、大陸軍と彼らがおとぎ話の世界を支配しようとしていることを二人に手早く話した。ジャックとゴルディロックスは思ったよりもよく知っていた。大陸軍という言葉は王国中に広まっているのだ。

         「知ってる犯罪者の多くは、すでにやつらの仲間だ」ジャックが言った。「軍は刻々と大きくなっているんだ」

         「二人に大きなお願いがあるの」アレックスが言った。「今、陸軍に見つからないように皇族を遠くへ送り出そうとしてるところよ。あたしとコナーが魔女を倒した任務の時みたいに、一緒に行って皇族を守って欲しいの」

         ジャックとゴルディロックスは互いに顔を見合わせたーーそれは大きな頼みだった。皇族たちはそれぞれ異議をつぶやき始めた。どうしたら泥棒カップルが守ってくれるというのだろう?

         レッドが階段の上から注意を向けるために口笛を吹いた。「あなた方が考えていることはわかるわ。否定的な考えがないからよ。あたし自身、この二人に持ったことないけど」レッドが言った。「でもこの世界にゴルディロックスの剣を受けて立てる者はいないし、ジャックの斧に立ち向かえる者もいないわ。彼らがいなければ、王国中を旅することもできないわよ。彼らの保護下でちゃんと守ってもらえるわ」

         ジャック、ゴルディロックス、そして双子はもう一度見た。レッドが他の者たちに二人をかばったのが信じられなかったのだ。

         「ありがとう、レッド」ゴルディロックスが言った。「あなたから褒められるなんて思ってもみなかった」

         「あ、言うのを忘れてたんだけど」レッドが興奮して言った。「今は新しい敵がいるのよ!だからあなたはいいの!」

         レッドはゴルディロックスに親指を立ててみせた。リトル・ボーは目をぐるりと回し、腕を組んだ。

         「いいでしょう」シンデレラが言った。そしてホープ姫を前よりも強く抱いた。「あなた達が彼らを信じているなら、この任務に最適な人達なのでしょう」

         「じゃあ、決まりね」エメラルダが言った。「さあ無駄にしている時間はないわ。王や女王達を安全なところへ」

         妖精が彼らの公式な服をシンプルな普通の服に変身させた。彼らは羊皮紙と巻物を持ち、アレックスの指示通り指揮官に兵を分けることを書き記した。エメラルダとマザーグースを除いた妖精たちは、手紙を持つとそれぞれ指定された王国に向かって消えた。

         そうこうする間、コナーは階段を登り、ブリーとエメリックと話した。「皇族たちと一緒に秘密の道に行って欲しい。君たちに何かあったら、僕は自分を許すことはないよ。ジャックとゴルディロックスについていれば安全だからね」

         ブリーとエメリックは大きく開いた目でうなずいた。過去二十四時間の出来事が頭をフル回転させていて、まともに考えることができなかった。なんでも同意しただろう。

         「わかったよ」エメリックが言った。

         「良さそうだわ」ブリーが言った。

         コナーは微笑んで、レッドの方を向いた。「ブリーとエメリックが誰か知ってる人と一緒に行けるように、君とフロギィも行って欲しいんだ」彼は言った。「それに、僕とアレックスも皆が安全だとわかってる方が安心だよ」

         「何ですって?」レッドが鋭く訊いた。「あのピープ女と一緒に行けって言うの?」

         「君が玉座を失ったのは本当に残念だけどさ」コナーが言った。「でも陸軍が君を見つけたら、女王だったは通じないよ。ネックレスが好きなのはわかるけど、ギロチンを身につけるのは良くないと思うよ」

         「わかったわよ」レッドが同意した。「でももし捕まったら、リトル・ボーが射撃訓練の的になるように提案するんだから」

         全ての皇族が変装すると、他の者たちはアレックスの後について妖精宮殿の入口階段へと出た。二頭立ての馬車が三台、宮殿の前に並んでいた。

         チャンス王、シンデレラ女王とホープ姫は、スリーピング・ビューティー女王とチェイス王と一緒に先頭の馬車に乗った。スノー・ホワイト、チャンドラー王はラプンツェル女王とウィリアム卿と二台目の馬車に。フロギィ、レッド、エメリック、そしてブリーは三台目の馬車に。そしてレッドには残念なことに、リトル・ボー・ピープも一緒だった。

         「誰かあたしをオオカミの胃の中に戻してくれない?」レッドは悶ていた。

         「長い旅になりそうだわ」リトル・ボーはため息をつき、首を横に振った。

         馬車の扉が開く前に、ブリーは外に出てコナーに力強くハグをした。「気をつけてね」彼女は言った。

         コナーは真っ赤になった。「僕のことは心配ないよ。危険には慣れてるんだ」 

         そして彼は扉を締めて、幸運を祈るノックをした。シンデレラが先頭の馬車から顔を出した。

         「私の継母や異母姉妹のことを何か聞いたんじゃないかと思って」彼女は訊ねた。「別の世界でうまくやってるかしら?」

         「うん、そうだよ」コナーは言った。「最後に話した時は、レディ・アイリスとローズマリーはダイナーを開き、ペチュニアは動物病院で働いていた。とても幸せそうに見えたよ」

         ジャックとゴルディロックスは、移動中も見張れるように先頭の馬車の馬に乗った。アレックスが先頭の馬車の前に立ち大きな魔法をかけようとしてる間に、エメラルダは馬車が自動で進むように魔法をかけた。

         「いいわ」アレックスは一人呟いた。「行くわよ」

         アレックスは出来る限りはっきりと小道を思い描いた。王国と王国の間をくねくねと曲がり、どこに向かっているのか目安を与えず、どこにいたのか跡も残さないものだった。魔法の杖の先で地面に触れると、彼女の目の前に黄金に光る小道が現れた。四分の一マイルもなく両端が見えない道だった。

         ジャックとゴルディロックスは手綱を取り、秘密の小道へと馬車を進めた。アレックスはエメラルダ、マザーグース、コナーと正面階段で合流し、小道と馬車が見えなくなるまで手を振った。

         エメラルダはアレックスの方に手を置いた。「おばあちゃんはあなたをとても誇りに思うでしょうね」

         「そうね」アレックスは悲しげに言った。彼女は祖母にただそこにいて見て欲しかった。

         エメラルダ、マザーグース、コナーは妖精宮殿の中に戻った。アレックスが一緒に行こうと振り向いた時、この数時間すっかり忘れていた人物を見た。

         「ルーク!」アレックスは言った。彼はロゼッテが魔法で大きくしたバラの陰から覗いていた。

         「アレックス、中に入るだろ?」コナーが訊いた。

         「ええ、すぐに行くわ」と彼女は言って、ルークに会いに庭へ走った。彼女は大きなチューリップ畑の後ろから彼を引っぱりだして、首に腕を回した。

         「また勝手に入ってごめん。ちょっと会ってなかったから心配で。あの馬車はーー」とルークは言ったが、彼の嬉しそうな表情はアレックスのの深刻な様子を見てすぐに消えた。「なにかまずいことでもあったの?」

         「何もかもよ」と彼女は言って涙をこらえた。今日はよくやったが、ルークの前でだけは勇敢でいなくてもいいような気がした。「おばあちゃんは病気だし、侵入した兵士たちはこの世界を支配しようとしてるの!」

         「何?」ルークは言った。「兵士ってどういう意味ーー」

         アレックスは彼のシャツをつかんで、近くで目を見れるように引き寄せた。「お父さんとここからできるだけ遠くへ逃げて」彼女は言った。「怪我をする前に出発しないと!」

         「僕にがっかりしたのを優しく言ってるんじゃないことを願うよ」ルークは彼女を笑わせようとして言った。

         「真剣な話よ」アレックスは言った。「お願いだから、行って!あなたに何かあったら、耐えられないわ!ここから出ていくって約束して!」

         「わかった、わかったよ。父さんと出ていくって約束するよ」

         アレックスはため息をついてうつむいた。「良かった」彼女は言った。「じゃあ宮殿に戻らなくちゃ。まだ考えなくちゃいけないことがたくさんあるの」

         ルークはアレックスが今まで見たことがないほど悲しい目で彼女を見た。「次に会えるのはいつかな?」

         「わからない。これがすべて片付いたら捜すわ。今はあなたを心配しなくていいように行ってちょうだい」

         ルークはうなずいた。そして彼女の頬にキスをすると家に向かった。

         チューリップの陰に座るのは、この日初めて人目から離れることだった。アレックスは地面にひざまずき目を閉じると、ただ呼吸した。彼女は妖精たちや皇族、コナーの前でうまく演じた。しかしルークに会ったことで、感情のすべてが彼女の若い肉体の内側で構築され、急に彼女を襲ったのだ。

         「ただ呼吸をするのよ、アレックス」彼女は自分に言い聞かせた。「あなたならできるわ」

         アレックスは目から恐怖の色が消えたと思うまで、チューリップの陰にいた。そして彼女の勇敢な顔が戻ってきた。

        | hanno | 20:31 | comments(0) | - | - |
        【TLOS3ブログ読書会】chapter18(前半)ver1.0
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          使いの白鳥



           マザーグースはレスターと双子が帰ってくるのを待つ間、大バルコニーの柵ぎわに立って、上空を眺めていた。エメリックとブリーは彼女から少し離れたところで、フロギィやレッドと熱心な会話をしていた。

           「じゃあ、六つの王国と二つの自治区とひとつの帝国があるんだね?」エメリックはおとぎ話の国についてのフロギィのレッスンを理解して尋ねた。

           「その通り!」フロギィは言った。「そして六つの王国の統治者と妖精評議会でハッピリー・エバー・アフター議会が成り立っているんだ」

           レッドは咳払いをした。「かつては六つの王国、今は五つの王国とひとつの共和国」

           ブリーはこれらの多くの情報に寄り目になってしまいそうだった。「それでレッドはクラブ革命までノーザン王国の一部であった王国の女王だったんでしょう?」彼女は訊いた。

           「クロー革命よ」レッドが訂正した。「オオカミの自由に対する市民の暴動という意味なの。悪の女王は当時、ノーザン王国で力を持っていたのに、農村を襲うオオカミたちに対して何もしなかった。だからあたし達が反乱を起こし、あたしは自分の王国を手に入れたのよ」

           「選挙で失った女王の座ね」ブリーは概要をつかんだ。「でも今は、新しい女王が政府を変えて王国が共和国になった。彼女はやっていけるの?」

           「間違いなくね」とレッドは言って、そのことについて口をとがらせて考えた。

           「私たちの国では連邦議会と下院があって、大統領がそういったことをさせないようにしているんだと思うわ」ブリーが言った。

           「ええ、そうね。あたしもそうしようと思ったの」レッドは鼻をふくらませて言った。「選定された代表者に任せて、偏った決議で責められないように。王国全体が攻撃しないように。どこで道を間違えたのかわからないわ」

           「でも誰が今の女王なの?」エメリックが訊いた。

           「リトル・ボー・ビンボー」レッドはあからさまに言った。「彼女は赤ずきん王国にいた中で、一番醜くて、一番恐ろしい生き物よ。そして村人全員を投票するように脅したんだわ」

           「それは私たちの世界の政治と同じみたいね」ブリーが言った。

          「リトル・ボー・ビンボーって初めて聞いたよ」エメリックはそう言って、彼女のことを考えると震えあがった。

           「じゃあ、とてもラッキーね」レッドが言った。小さな微笑みが顔に浮かんだ。リトル・ボー・ピープのことをでっち上げるのことで、とても気持ちが癒やされたのだ。レッドは選挙中にやっておけば良かったと思った。

           「戻ってきたぞ!」マザーグースは空を指して言った。

           バルコニーの上を影が通ると、アレックスとコナーがレスターを下降させているのが見えた。彼らがバルコニーに着陸すると、友人たちは急いで駆け寄った。

           「それで何がわかった?」マザーグースが訊いた。

           「兵士は囚人たちを勧誘したんだ!」コナーは大きなガチョウから跳び下りながら言った。「やつらのキャンプ地の上空を飛んだら、兵士が闘いに備えて訓練していたよ ー 何千もの兵士だった!」

           マザーグースは胸の上に手を置いた。「なんてことだ。次は何をしたら良いんだい?」

           「考えているところよ」アレックスがレスターから下りながら言った。「それまでは、マザーグースは妖精評議会のメンバーをできるだけ早くホールに集めてもらえるかしら。コナーは一緒に行って、あたし達が見てきたことを他の妖精たちに話しておいて。まずは王や女王たちをすぐに妖精宮殿に集めて、話し合いに参加できるようにすることだわ。これは妖精評議会だけの問題じゃなくて、ハッピリー・エバー・アフター議会全体で協議しないといけないことよ」

           マザーグースとコナーは頷き、宮殿の内部へと向かった。アレックスは魔法の杖をかざし、鞭のように六回振った。光のすじがバルコニーに漂い、レスターほどの大きな六羽の白鳥が魔法で姿を現した。そして手のひらの上で杖の先端をくるくる回すと、紙の山が現れ、それを巻くと白鳥のくちばしに挟んだ。

           「それは何かい?」フロギィが訊いた。

           「招待状よ」アレックスは別にとっておいたコピーを手渡した。

           

          皇族の皆さま

          緊急事態により
          ハッピリー・エバー・アフター議会の全メンバーおよびその家族は
          ただちに妖精宮殿へお越し願います
          詳細は到着時に

          フェアリー・ゴッドマザー代理
          アレックス・ベイリー


           「コーナー王国、チャーミング王国、ノーザン王国、イースタン王国、ボー・ピープ共和国の王や女王にできるだけ早く届けて、彼らを連れてきて欲しいの」アレックスは五羽の白鳥に指示してから六羽目の白鳥の方を向いた。「あなたには別のお願いがあるの。この招待状を届けてもらうのは ー 」

           彼女は白鳥にだけささやいたので、他の者には聞こえなかった。

           「もし彼らが協力してくれない時は、何をしても良い許可を与えるわ」彼女は言った。「必要なら脚で連れてきて。この招待状に選択肢はないの。さあ、行って」

           六羽の白鳥はお辞儀をして、いっせいに飛び立った。彼らは別々の方向に、これまで鳥が飛んだことのないくらいのスピードで飛んだ。

           「さあ、どうするの?」レッドが訊いた。「王や女王はあなたのメッセージを真剣に受け止めてくれると思う?」

           「様子をみてみないと」アレックスは心からそう思って言った。

           レッドとフロギィは二、三時間待ってから、アレックスに一人で考える時間を与えるために、ブリーとエメリックを中へと連れて行った。彼女は何度も行ったり来たりしていたので、床に跡がつきそうだった。学校で歴史の授業で戦争について学んだ時、彼女自身が関与し、一人で率いることなど考えもしなかった。彼女は帝国軍の将官に対抗し、ハッピリー・エバー・アフター議会を率いていく能力があるのだろうか?

           彼女は常識や論理の強みが、戦闘力の不足分を補ってくれることを祈った。そしてルーズベルトやチャーチルなどの第一次世界大戦の英雄のことを考えていた。彼らだったらどうしただろうか?どんな作戦を立てただろうか?彼女の祖母が病気でなかったら、何をしただろう?

           上の方で物音が聞こえたので、アレックスは夕刻の空を見上げた。ランド・オブ・ストーリーの各地から、白鳥が一羽ずつ王や女王を連れて宮殿に戻ってくるのが視界に入ってきた。

           アレックスの元に全員飛んでくると、彼女は安堵のため息をもらした。誰も彼女の招待を断らなかったのがわかって、とても嬉しかったのだ。

           五羽の白鳥は、順番にバルコニーに下りた。最初の白鳥はチャンス王とシンデレラ女王、二歳の娘ホープ姫をチャーミング王国から連れてきた。二番目の白鳥はイースタン王国からスリーピング・ビューティーとチェイス王を、三番目の白鳥はノーザン王国からスノー・ホワイトとチャンドラー王、四番目の白鳥はコーナー王国からラプンツェル女王と夫のウィリアム卿。そして五番目の白鳥はリトル・ボー・ピープを運んできた。

           王たちは皆、思わぬ移動に困惑していた。リトル・ボー・ピープはバルコニーにで伝説的な統治者たちに囲まれて、少し怖気づいているように見えた。初めてハッピリー・エバー・アフター議会に参加のために呼ばれたのだ。

           「陛下の皆さん」アレックスが言った。「お越しいただき、感謝します」

           「アレックス、どういうことなのか皆知りたがってると思うわ」シンデレラが言った。「そしてフェアリー・ゴッドマザーはどうしたの?どうして彼女自身からじゃなかったの?」

           「病気で倒れたからなの」アレックスが知らせた。王たちはまさに双子が知ったときと同じように受け止めた。フェアリー・ゴッドマザーが病気で倒れることがあるなんてことさえ知らなかったのだ。「それは直面している問題のひとつに過ぎないと思うわ。良かったら、すぐに話し合いに入れるようにホールに来てちょうだい」

           彼女は王たちの列を率いて妖精宮殿の中に入り、コナーやマザーグースや他の妖精たちが待つホールへと階段を下りて行った。彼らはそこにコナーがいることに驚いた。特にシンデレラは、フェアリー・ゴッドマザーが彼女の王国で入口を閉じたのを目の当たりにしたのだ。彼らは何か深刻なことが起こっていることがすぐにわかった。

           フロギィ、レッド、ブリー、エメリックは何が起こるか見ようと階段を下りた。ブリーとエメリックはどの王や女王とも面識はなかったが、誰が誰だか認識するのにさほど時間はかからなかった。スノー・ホワイトの肌の白さやラプンツェルの流れるような髪が、決定的な証拠となっている。彼らはその場にとどまり、階段の最上段に座って、美しい王たちに見とれていた。

           レッドは本能的に合流しようとしたが、かつての友人たちの中にリトル・ボーを見つけると、そこにはもう属さないのだと苦々しく思い知らされた。彼女はブリーとエメリックに並んで階段に座り、遠くから敵を眺めた。

           フロギィはチャーミング家の兄弟たちに挨拶をしようと急いで階段を下りた。

           「チャーリー、どうしたんだ」チャンドラーが訊いた。

           「なぜまたカエルに?」チャンスが知りたがった。

           「長い話なんだ」フロギィが言った。「必ず全て説明するよ」

           アレックスはこれ以上混乱が広がる前に説明しようと決めた。「フェアリー・ゴッドマザーの具合がかなり悪くて、魔法が消えていってるの」彼女が話した。「チャーリー王子の魔法は消えて、別の世界への入口は片方だけ開いてしまった。あたし達の世界から兵が侵入し、この世界を征服しようとしている。コナーが兵を近くで見たから、話してもらうわね」
           
           アレックスはコナーに立って発言するよう合図したが、マザーグースが突然立ち上がった。

           「いや、私が話そう」彼女は言った。「やつらがここにいるのは私の責任なんだ」

           アレックスとコナーは顔を見合わせた。マザーグースがハッピリー・エバー・アフター議会の前で責任をとろうとしていることは驚きだった。

           マザーグースは王や女王たちに大陸軍についてと、おとぎ話の世界への入口を通って来たことが、なぜ彼女の責任なのかを説明した。そして彼らがピノキオ牢獄を襲撃し、犯罪者を勧誘したことを話し、最後に、間もなく戦争になるかもしれないと言わなければならなかった。

           君主たちが説明されている間、アレックスは椅子に座っていた。未来がもたらすかもしれない恐怖と、どうすれば一番備えられるかについて考えながら。

           「五千人のこの兵に、何百人も加わったのねーー私たちが塀の向こうに押し込んだ犯罪者たちが」スノー・ホワイトは口を手で覆って訊いた。

           「その通り」マザーグースは言った。「それとドワーフの森や王国中の逃亡犯すべてにも軍隊に入るよう影響する疑いもあるな」

           「全部でどのくらい把握できてない犯罪者がいるの?」スリーピング・ビューティーが訊いた。

           「三千人くらいだと見積もってるわ」エメラルダが皆に言った。

           ラプンツェルは頭の中ですぐに計算した。「だったら、大陸軍は全部で九千人近くになるってことね。私たちの兵士を合わせた数を上回るわ」

           「あなた方の兵はどのくらいいるの?」コナーが訊いた。

           「ノーザン王国には二千人の兵がいる」チャンドラーは言った。 

           「チャーミング王国は千人だ」チャンスが言った。

           「イースタン王国兵の多くは魔女の呪いと闘おうとして、ずいぶん減ったんだ」チェイスが言った。「千五百人くらいしか残ってない」

           「コーナー王国の兵はとても少なく、五百人としか言えないな」ウィリアム卿が言った。

           まだ答えてないのは、リトル・ボー・ピープだけだった。「正確な数はわからないけれど、どこかにーー」

           「八百二十八人よ!」レッドが階段の上から叫んだ。

           リトル・ボーは彼女を睨みつけて言った。「そうです。ありがとう、レッド前女王」

           数の少なさに双子は驚いた。

           「お前たちの世界と違って、大きな兵を持つ必要が今までなかったんだ」マザーグースが言った。

           コナーはこの数字を頭に入れた。「ということは、ハッピリー・エバー・アフター議会は合わせて五千五百人くらいの兵か。それに対して九千人ーー陸軍は二倍の戦力になるかもしれないんだ!」

           「まだエルフ帝国とトロブリン自治区の兵士を入れてないよ」マザーグースが思い出させた。「マルキ将官が囚人たちを説得したように、彼らに言ったら、もう終わりさ。勝ち目はないね」

           「じゃあ、先回りしなくちゃ」アレックスが初めて話し合いに加わった。「何としてでもエルフとトロブリンをこちら側につけないと。彼らはハッピリー・エバー・アフター議会とうまくいってないかも知れないけど、あたし達と同じように陸軍が征服するのを見たいとは思わないわ。エルフとトロブリンの兵がどのくらいいるか、誰か知ってる?」

           「トロールとゴブリンは七百人の兵を持ってると思うわ」タンジェリーナが言った。「そしてエルフが千人の兵よ」

           「よかった」アレックスが言った。「トロブリンとエルフに加わるように説得すれば、何とかなる見込みがあるわ。それに、妖精がいるのを忘れちゃいけない」

           演壇の後ろにいる妖精たちはみな反対だったが、ザンタスが一番大きな声で言った。「妖精は闘いに行けない。それはハッピリー・エバー・アフター議会の魔法の規則に反する!」

           「規則がなんだよ!」コナーが大声で言うと、部屋は静まった。「規則はおとぎ話の世界の平和と繁栄を維持するためにあるけど、その世界がすぐになくなるかもしれないんだ!この闘いに勝ちたかったら、真っ向から戦わないといけない。ザンタス、君以上に火を持っている者はいないし、スカイリーン以上に波を操れる者はいない。そしてタンジェリーナのように針で刺すことができる者もいない。みんなの能力を使わないといけないんだ」

           妖精たちは道徳的には全面的に反対だったが、コナーは正しかった。彼らが大義のために魔法を使う限り、選択の余地はないのだ。アレックスは手を組み床を見て、他に何をしておくべきかを考えた。

          | hanno | 10:39 | comments(0) | - | - |
          【TLOS3ブログ読書会】chapter17(後半)ver1.0
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             内部は燻っていた。最上階の独房は、すべて扉が開いていて空だった。アレックスとコナーが中央から下をのぞくと、下の二十九階も同じだということがわかった。

             「誰かいるようには思えないな」コナーが言った。「まるで火災避難訓練で、誰も戻ってこなかったみたいだ」

             双子は何者かの声を突然聞いて、跳び上がった。最上階の独房にぽつんと座っているのは、ある女だった。

             「しーっ!」彼女が言った。「こっちよ!」

             アレックスとコナーは警戒しながら女の方へと近づいた。女が誰であれ、彼女はまだ囚人で信用することはできない。女はレッドよりも二つか三つほど年上だったが、優雅に歳を取ってはいなかった。髪は細くボサボサで、大きな目の下にはクマができていた。真っ黒の服を着ていたが、靴は履いていなかった。

             「ここよ!」その女は座っている床から彼らに呼びかけた。彼女の声は警報のようだったが、彼女はくつろいでいるように見えた。「誰かに言って!兵士がさっき突然来て、囚人を連れて行ったの!やつら世界征服するつもりよ!」

             アレックスとコナーは話をするためにかがんだ。彼女は出来る限り頭を檻に押しつけた。

             「兵のことは知ってる。止めようとしているの」アレックスは言った。「もっと知るためにここに来たのよ」

             「囚人は連れて行かれたの、それとも仲間に加わったの?」コナーが訊いた。

             「仲間になったのよ」女は言った。「兵士は独房をすべて開いて、囚人にここに残るか仲間に加わるか選択肢を与えたの。そしてご覧の通り、ほぼ全会一致だったってわけ」

             「どうしてあなたは一緒に行かなかったの?」アレックスが訊いた。

             女は二人を気が狂っているのかというように見た。「私は外には出ないの」彼女は首を振って言った。「外には何もない。たぶん、ある時点ではあったけど、もうないってこと。私はこの独房にいるの」

             「ここには長いんだろう?」コナーが尋ねた。

             アレックスは彼女に何か奇妙なものがあると思った。独房の横の壁に板があるのを見たので、それを読むために立った。


            グレーテル嬢
            ヘンゼル殺害の罪により
            ピノキオ牢獄に無期懲役

             アレックスはコナーのその板の文字を見るように合図した。「コナー、『ヘンゼルとグレーテル』のグレーテルよ!」彼女は囁やいた。「ヘンゼルを殺したんだわ!」

             「何だって?」

             「いいのよ。囁く必要はないわ」グレーテルは言った。「何て書いてあるか知ってるの。自分が誰だか知ってるし、何をしたかも知ってる」

             アレックスは急にたくさんの質問ができた。「どうして殺したの?」

             「それが自由になれる唯一の方法だったからよ」

             「何からの自由なの?」

             「『ヘンゼルとグレーテル』から」グレーテルは言った。

             「物語の?」コナーが尋ねた。

             「いいえ、肩書きよ」グレーテルが言った。アレックスとコナーの怪訝そうな表情で、彼女はさらに説明をした。「お菓子の家から無事に戻ってから、私が欲しいのは普通の生活だけだったの。でもヘンゼルは違った。彼はヒーローでありたかった。そして森で起こったことを知り合いに話して、その人達がさらに知ってる人に話して広がり、王国中でおなじみの名前になったわ。皇族のような扱いで、私たちのパレードがあったり、行った先ではどこでも叙勲されたり、私たちの名前が休暇になったりしたの」

             「すごく良さそうだけど」コナーが言った。

             グレーテルの視線が彼を射た。「いいえ、酷いものだったわ」彼女は言った。「私のことなんてどうでも良くて、みんな『ヘンゼルとグレーテル』にしか興味がなかったんだもの。私はグレーテルでいたかっただけ。ただのグレーテルよ。でも何をやっても、ただのグレーテルにしてくれないの。兄さんは私に一生つきまとう見えない足かせのようだった」

             「でもあなたのお兄さんでしょ」アレックスが言った。「愛してなかったの?」

             グレーテルは低くうなり、腐ったものでも食べたかのように舌を出した。「愛してなかったわ。我慢ならなかったのよ!」彼女は言った。「ヘンゼルは好青年に見えたかも知れないけど、彼は自分自身と注目を浴びることにしか関心がなかったわ!そしてさらに称賛を受けるためだけに、私を連れてまわしてたのよ!それにヘンゼルはお菓子の家での出来事を自分の手柄にしたわ。魔法使いのおばあさんを罠にかけて暖炉に突き飛ばしたのは私なのに!私がいなかったら生きてなかったでしょうよ!あの時わかっていたら、魔女に彼を食べさせていたのに!」

             「それで彼を殺したの?」

             グレーテルは頷いた。「あれは事故だったの。ある日、森の中を歩いていたら、どこに行くとか誰に会うとか、どの賞を授与するとか計画を語りだしたの。それでカッとなって突き飛ばした。でも後ろが崖だったのは知らなかったのよ!」

             「誰かに事故だったって話した?」アレックスが訊いた。

             「そうするつもりだった」グレーテルは言った。「でもこの独房は、外の世界にはない何かー ただのグレーテルでいることができるって気付いたの。だから喜んで有罪になり、それ以来ここに。それで今日、兵士たちが仲間になるかここに残るか尋ねた時も考える必要もなかったわ」

             グレーテルは独房が与える平和を思いながら、ため息をついた。コナーはアレックスを見て、こめかみに指で円を描いた。「頭がおかしいんだ!」彼は声を出さずに言った。

             しかしグレーテルの話は終わっていなかった。「ひとりの人間が他の人にできる最悪なことって、もちろん食べること以外だけど、アイデンティティを何かの半分に減らすことよ。誰かが半分、あるいはそれ以下のアイデンティティで扱われると、それは一人の人間として扱われてないということなの。誰でも個性を持つ権利があるのよ」

             コナーはゆっくりと立ち上がり、独房から離れた。「えっと、ありがとう、グレーテル嬢!」彼は言った。「もう行かなきゃ。兵士たちがどこに行ったか調べないとけないんだ」

             「待って!」グレーテルが行った。「教えてあげる!兵たちはキャンプに戻ったわ。でも将官とその部下は別の所よ!」

             「それはどこ?」アレックスが尋ねた。

             「どこかはわからないけど、別のどこかよ」グレーテルが言った。「斜め前の囚人がー頭にマスクをかぶっているからマスクマンって言うんだけど、連れて行かれる前に将官と話していたわ。妖精に対抗して世界を征服するにはドラゴンが必要だって説得したの!それが唯一勝てる方法だって言ってた!」

             アレックスとコナーは同様に困惑の表情で見返した。「ドラゴン?」アレックスは尋ねた。「でも何百年も前にいなくなったんでしょう。ドラゴン時代に撃退したのが、あたし達のおばあちゃんとお友達よ」

             「マスクマンはどこでドラゴンを見つけられるか知っているみたいだった」グレーテルが言った。「それでも驚かないけどね。とても変わった男だったもの。独房に十年くらいいたけど夜な夜なひとり言を言うのが好きだったわ。 時々、そこで誰かと話しているのが間違いなく聞こえたけど、そんなはずないし」

             コナーはマスクマンの独房に歩み寄り、中を覗いた。「なあ、アレックス、この男はいろんなものをを持ってるぜ」

             アレックスも中に入った。扉はまだ開いており、彼らは一緒に歩いた。その独房の中にいるだけで寒気がした。翼のある生き物や海賊船や大きな耳や足をした動物たちの彫られたイラストで、壁はいっぱいだった。積まれた石炭の山があり、彼は小さな欠片をカギやハートや剣の形に削っていた。

             そして壁には、銀フレームのついた楕円形の鏡が掛かっていた。

             「どうしてマスクマンは鏡が必要だったんだろう?」コナーが尋ねた。

             「わからないわ」アレックスが言った。「でもここを出なきゃ。キャンプ地に行って、兵が何をしているか確かめないと」

             彼らは独房を出て、天井の出口に行った。アレックスが床に向かって魔法の杖を振ると、石が出口までの階段になり、二人は上った。

             「さようなら!」グレーテルが叫んだ。「彼らを止めることができると良いわね!」

             「そう願うよ!」コナーはそう言ってから、屋根に登った。

             「さようなら、ただのグレーテル」アレックスが言った。「協力ありがとう」

             双子が屋根の上に登ってしまうまでに、レスターは背の高い草を食べ尽くしていた。二人は大きなガチョウに飛び乗り、再び空へと離陸した。

             「将官は部下の半分に南東のどこかにキャンプを設営するように言った。入口が僕らを吐き出したところだ」コナーはアレックスに言った。「もう合流しているだろうな」

             アレックスはレスターの手綱を取り、イースタン王国の南の上空高くに彼を操縦した。二人は何を探しているのかわからなかったが、地面を探した。そしてキャンプが視界に入ってくると、それだと確信した。

             何百本もの木が切り倒され、兵士たちが拡張したキャンプへの道が作られていた。何十ものベージュ色の大きなテントが設営され、木材にされた木はキャンプの周りの壁として使われていた。

             何千もの兵士が準備しキャンプの周りを行進していたが、兵士だけではなかった。千ほどのピノキオ牢獄からの新兵が散り散りになって、キャンプの周辺にいた。巨人は兵士がキャンプを建てる際の重荷を持ち上げ、魔女は木の枝からほうきの柄を編み、兵士はゴブリンに大砲の点火の仕方を、トロールにはライフルの撃ち方を教えていた。

             恐ろしいことに、彼らの射的は木でできた妖精人形の列だった。

             「マザーグースの言ったとおりだ」コナーが言った。「彼らは戦争に備えてるんだ」
             

            | hanno | 09:56 | comments(2) | - | - |
            【TLOS3ブログ読書会】chapter17(前半)ver1.0
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              唯一の証人



               アレックスとコナーは一晩中、祖母の傍らに座っていた。このような時に寝ることは、二人とも考えられなかった。もしいなくなったら、祖母が起きる気力をなくすんじゃないかと思ったのだ。彼らの存在を十分に感じて、彼女の中のほんの少しの魔法が働くことを願った。

               緊急の妖精評議会の会議は、直面している問題を話しあうために、翌朝早くに招集された。フェアリー・ゴッドマザーが欠席なので、アレックスはコナーに同伴を頼んだ。この双子は一緒だと良い考えが浮かぶので、二人は妖精評議会が現在の状況を把握する助けになればと思った。アレックスは彼女の椅子に座り、コナーはその肘掛けにもたれた。祖母の席は空いていたが、コナーはそれが使用可能だと思いたくはなかったので、座りたくなかった。

               会議はすでに始まっており、彼らが到着した時にはすでに白熱していた。妖精たちは皆、マザーグースを睨みつけて演壇に立っていた。

               「これまでのところを整理すると」エメラルダは言った。「別の世界の兵が二百年もの間、入口に閉じ込められていたけど、今はこの世界に到着して征服しようとしているのね?」

               「細心の注意を払わないといけないことだ」マザーグースは椅子をずらして言った。

               「ではなぜ、誰にも教えてくれなかったのですか?」タンジェリーナが苛立っていった。彼女のハチはブンブンと巣の周りを飛んでいた。マザーグースが口を開いたら、攻撃しそうだった。

               「フェアリー・ゴッドマザーに心配させたくなかったんだ」マザーグースは言った。「私一人でこの状況を対処できると思ったし、誰かを巻き込むのは恥ずかしかった。グリム兄弟と私で入口の中に兵を閉じ込めた。そして二百年経ったが、幸運にもフェアリー・ゴッドマザーによって封印されている。彼女が病気になるまでは、危険は免れたと思っていたんだ」

               「では、それについて誰にも話さなかったのは、心配させないためということですか?」スカイリーンが尋ねた。「言わせてもらえば、それは雨に濡れたくないから、池に飛び込むようなものです」

               マザーグースは双子を見た。特にコナーの方を見てから、評議会に今まで誰にも話していなかったことを話した。「ずいぶん昔、フェアリー・ゴッドマザーと私がまだ白髪になる前、顔にしわができる前、そして私たちがもっとスリムだった頃、エズミアとアレックスの前に私はフェアリー・ゴッドマザーの第一後継者だったんだ」彼女は打ち明けた。

               妖精たちは皆、ショックを受けて互いに顔を見合わせた。何よりも彼女たちはマザーグースのことをあまり知らなかった。アレックスとコナーは、彼女がこの秘密を守っていたことに感心した。

               「ほんの二ヶ月ほどで、向いてないことはわかったよ」マザーグースは説明した。「もちろん可能であったが、ただ望まなかったんだ。私は責任を負うには自由すぎた。だからその妖精にとっての最高の栄誉を辞退し、王国のお笑い草になった。フェアリー・ゴッドマザーは理解してくれたが、がっかりしたのを知っている。それが私には辛かったよ。それで私は彼女を二度とがっかりさせまいと誓い、1800年代貪欲なフレンチポテトにうっかり捕まった時も、フェアリー・ゴッドマザーの瞳の中に落胆の色を見ないようにと、出来る限りの方法で対処したんだ」

               妖精たちは何と言ってよいのかわからなかったので、ただ首を振った。コナーはマザーグースが気の毒に思えた。アレックスのような早熟の妹と一緒に育ったので、人を落胆させることがよくわかっていたのだ。そしてなぜマザーグースが入口のことを正直に言わなかったのか、やっと理解できた。

               「ねえ、ちょっと!」コナーが妖精たちに言った。「大目に見てあげてよ!そこに立って、さももっとうまく対処できたかのように首を振ってるだけじゃないか。悪く言うつもりはないけどさ、少なくとも解決策は思いついたんだよ。この中で誰か何か解決したのはいつだっけ?危機が迫って何をすべきか見つけるのは、いつもアレックスと僕じゃないか」
               
               「悪く言ってると思うのだが」ザンタスは他の妖精たちに言った。

               「つまり、ガラスの人は石を投げちゃいけないってことだよ」コナーが言った。

               「それを言うなら『ガラスの家に住む者は、石を投げてはならない』でしょ」アレックスが訂正した。

               「ああ、そうだ。よくわかってるね」

               マザーグースはコナーに微笑み、口の形だけで「Cドック、ありがとうよ」と言った。エメラルダは次に何をすべきか考えながら、額を揉んだ。

               「起こったことで誰かを責めても仕方がないわ。なんとかする方法を見つけるために前に進まなくては」エメラルダが言った。「アレックス、何をすればいいと思う?」

               アレックスはエメラルダが尋ねたことが信じられなかった。「あたし?」

               「ええ、もちろんあなたよ。あなたのおばあちゃんが快復するまでは、フェアリー・ゴッドマザーとして行動するのよ」

               それは双子が消化するには大きなことだった。次のフェアリー・ゴッドマザーと呼ばれるのは、彼女にとって遠い未来のことで、今現在ではなかった。

               アレックスは親指を噛み、うつむいて考えた。「まずその兵士たちを捜す必要があるわ。そしたら次にどうすれば良いかわかるわ」彼女は言った。「彼らについて知れば知るほど、解決策を見つけるのが簡単になるの」

               「僕が最後に聞いたのは、ピノキオ牢獄を攻撃することについての話だった」コナーが言った。

               「どうして牢獄が狙われるのかしら?」ロゼッタが訊いた。

               「勧誘するって言ってたよ」コナーが言った。

               突然、部屋に緊張感が増した。妖精たちは皆、互いを見て熱心にささやきあった。

               「マルキ将官は頭の切れる男だと言っただろう」マザーグースは言った。

               「待って、どういうこと?」コナーは尋ねた。「多くの囚人を勧誘してどうなるの?」

               「牢獄には極めて力を持った者もいるんだよ」マザーグースが言った。「私はよく知ってる。そしてピノキオ牢獄の囚人は唯一つかまったやつらなんだ。ドワーフの森やそれぞれの王国の裏森には犯罪者がうようよいる。彼らが友人を見つけると我々に対抗する兵に加わる。彼らも皆、加わりたいんだ。将官が勧誘に成功すれば、年寄りの兵士と戦うだけではなく、戦争と戦うことになるかも知れない」
               
              コナーは息を呑んだ。訊いたことを後悔したほどだった。コーラルもまた、この話の成り行きに困惑していた。彼女は礼儀正しく手を上げて質問した。

               「ハッピリー・エバー・アフター議会が対抗するかも知れないってこと?その・・・」

               「他の者すべて?」マザーグースが言った。「他の王国のすべての生き物は、妖精や人間に立ち向かう機会を待っていたんだ。彼らのチャンスになるかも知れない」

               コーラルは今にも泣きそうだった。彼女はフィッシャーをしっかり腕に抱き、明日は何があるのだろうかと考えた。

               「魔女、巨人、トロール、ゴブリン、エルフ達は、ドラゴン時代から私たちがいなくなるのを望んでいたわ!」バイオレッタが付け加えた。「私たちに対抗する組織的な能力が駆けていただけなの」

               「そしてそれは将官によって補える能力だ」マザーグースは言った。

               コナーと妖精たちはパニックに陥っていったが、アレックスは彼女の最初の計画を譲らなかった。情報が多いほど、選択肢は増えるのだ。彼女は魔法の杖を振り上げ、稲妻が飛び出すと、おびえた妖精たちは静かになった。

               「たくさんの仮定で心配しすぎよ」アレックスが言った。「囚人たちが将官に合流するかまだわからない。犯罪者たちは社会のルールに従うことができずに牢獄にいるんでしょ。だったら将官の命令に従うかわからないわ」

               彼女の言っていることは正しかった。確証がないことには、心配しても仕方がないのだ。

               「コナーとあたしは牢獄に行って、彼らが囚人の勧誘に成功したか確かめてみる」アレックスが言った。「見つからないように行く方法が必要ね。飛行船やユニコーンだと兵士たちに見つかってしまうわ」

               「レスターで行くといい」マザーグースが言った。「誰かにレスターを見られたとしても、普通の鳥だと思うだろう。だから別の世界ではレスターに乗りまわってるんだ」

               「いいわね」アレックスが言った。「できるだけ早く行って、何かできる案を考えましょう」

               妖精たちに異論はなかった。初めてアレックスの言葉が決定的になり、尊重された。無駄にする時間などなかったので、アレックスとコナーはマザーグースについて大バルコニーへと行った。彼女が口笛でレスターを呼ぶと上の塔から飛んできた。彼女は手綱を引くと彼の耳に計画をささやいた。

               フロギィとレッドもバルコニーにいて、ブリーとエメリックに庭の眺めを見せていた。ブリーはコナーを見るとすぐに歩いて彼の方に行った。

               「やあ、ブリー」コナーが言った。「よく眠れた?」

               「あら、わかるでしょ。新しい世界での初めての夜よ」

               コナーは落ち着かない感覚を嫌というほど思い出して微笑んだ。ブリーは疲れていたが、宮殿を見渡すその目には、まだ輝きがあった。

               「ここに閉じ込めたままでごめんよ。なるべく早く家に帰すから」コナーが言った。

               「冒険を望んだのは自分の責任よ」ブリーが言った。「私が連れてこさせたでしょ?」

               コナーの気持ちは少し軽くなった。そしてエメリックの方を見ると、フロギィが下にある庭園の別の場所を説明していた。エメリックは人生最高の時を過ごしているように見えた。そしてコナーにアレックスと行った最初のランド・オブ・ストーリーへの旅を思い起こさせた。あの冒険に再び直面するためなら、どんな犠牲でも払っただろう。

               「レスターにはひと通り話したよ」マザーグースは言った。「高く飛べば、見つからないことも彼はわかっている」

               「クワァ」レスターが頷いた。

               「じゃあ行きましょう」アレックスが言った。

               彼らは巨大なガチョウに乗り、牢獄の方に向かって離陸した。妖精王国の庭園を越え、マーメイド湾のキラキラした水上を越えると、イースタン王国の南にある半島の中央にあるピノキオ牢獄が見えた。

               「あったわ!」アレックスが指差した。「レスター、何かわかるまで旋回して」

               レスターは頷き、牢獄の上空を回った。どこもかしこも破壊されて、アレックスとコナーは空からでも入口が粉々に吹き飛ばされていることがわかった。しかし、囚人や兵士の姿はどこにも見当たらなかった。

               「もう少し近づいても大丈夫だよ」コナーが言った。

               レスターはできるだけ注意深く、ゆっくりと牢獄を旋回しながら下降した。近づいていくと、誰もいないことがより明らかになった。彼らは着陸する場所を探したが、牢獄は大きな鋲で覆われていた。アレックスが牢獄の屋根に魔法の杖を一振りすると、鋲はレスターが着陸できる背の高い草に変わった。

               「いいわ。誰も中にいないか見てみましょう」アレックスが言った。彼女がもう一度屋根に魔法の杖をかざすと、小さな昇降口が現れた。彼らは扉を開き、牢獄の最上階へと下りていった。

              | hanno | 06:11 | comments(0) | - | - |
              【TLOS3ブログ読書会】chapter16 ver.1.0
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                ピノキオ牢獄のマスクマン



                 ピノキオ牢獄がさらなる脅威にさらされたのは、魔女の激しい攻撃からちょうど復旧したころだった。鋭い落雷のように、フランス兵は早朝から砦に向かって突撃し、十九世紀の砲兵の力を存分に解き放った。

                 重く鋲のついた牢獄の正面扉は、大砲で木っ端微塵に爆破された。二百名の魔法でつくられた木製の兵隊は中の囚人たちを守っただけで、侵入してきた何千人ものフランス兵とは戦わなかった。フランス陸軍は内部に入り、木製の兵隊をライフルで吹き飛ばした。

                 兵隊が全滅すると煙は消え始め、マルキ将官が牢獄内へと足を踏み入れ、新たな征服先を見た。ピノキオ牢獄は三十階建てで円筒のように中は吹き抜けになっていた。地上階から各階に閉じ込められているいろんな生き物を見ることができた。

                 囚人は乱暴な連中で、巨人や魔女、ゴブリン、エルフ、動物、男や女のような者たちで構成されていた。独房の檻にチェーンをぶつけて、木製の看守を破壊したフランス兵を歓迎する者もいたが、その他の者たちは次のターゲットにされるのではないかという恐怖にすくんでいた。

                 侵入者のことは何も知らなかった。彼らの話し方や服装は、囚人たちが見たことのないものだった。彼らの武器から判断すると、とても邪悪な魔法の兵士たちだろうと確信した。
                 残りの木の兵たちは牢獄の中央に山積みにされた。手や足のような多くの部位がまだぴくぴく動いていた。将官はランプ油を注ぎ火をつけたので、上の階にいる囚人は捕らわれた看守が焼かれるのが見えた。

                 マルキ将官が炎の周りを歩くと、牢獄は静まり返った。

                 「おはよう」将官は上の囚人たちに向かって言った。「私はフランス大陸軍のマルキ将軍だ。君たちの多くは、帝国と兵について知らないだろうから、それを変えたいと思う。我々が来たところでは、歴史的にも偉大な兵力のひとつとして知られている。行く道をふさぐものは支配し、倒してきた。そして今度は、君たちの世界を我々のものにするために来たのだ」

                 囚人たちは彼がいることに違和感を感じた。将官は何も言わなくてもずる賢く力のある男だとわかった。彼らはそれを感じ取ったのだ。

                 「私たちのところではこんな言葉がある」将官は続けた。「『敵の敵は味方である』というものだ。今日、私は大陸軍と味方になる機会を与えよう。我々の征服に加わる機会を与え、君たちの罪を帳消しにしよう。君たちを投獄した者と闘う手助けをしてくれ。この世界をフランスのものにして、フランス帝国の一部にする助けをしてくれ!」

                 彼の提案に、多数の囚人たちは喜んだ。

                 「さもなければ、予定通りここで朽ちていくだけだ」将官は言った。「選択次第だ」

                 囚人たちのが喜びの声をあげると、牢獄は振動した。牢獄で過ごすことに比べたら何でもましだった。たとえそれが兵に加わることでさえも。ついに彼らが夢見てきた自由と復讐が叶うのだ。

                 バトン大佐に加え、デ・ランゲ大尉、レンバート中尉が罪人の独房で勧誘した。収容者はフランス帝国に忠誠を誓うか独房に残るかの選択肢が与えられたのだ。 そして将官には嬉しいことにほとんどの囚人は息を殺して、忠誠を誓い自由になることを待っていた。

                 たった一人、指揮官たちが予期していなかった答えをした囚人がいた。彼の独房は牢獄の一番高い階にあった。彼は将官に無視できない魅力的な伝言を提供した。

                 「マルキ将官」バトン大佐が言った。「将官とお話になりたいという囚人がいます」

                 将官は大佐がそのような要望を持ってきたのにイライラした。「その男が何になると言うんだ?」

                 「手伝いたいと言っております」大佐が言った。「そして彼の手伝いなしには、おとぎ話の世界を征服することは出来ないだろうとも言っています」

                 囚人の伝言を聞いて、将官は激怒した。誰がマルキ将官に大胆にも申し出をしようというのだろうか?しかし将官は何としてでも支配したかったので、エゴよりも好奇心が勝ることを許した。彼は囚人と話すことにし、囚人に何か役に立ちそうなものがあるか見てみることにした。

                 大佐は将官を牢獄の一番上の階に案内し、その大胆な男の独房を見せた。大きな板が独房の壁に飾られ、こう書かれていた。

                マスクマン
                フェアリー・ゴッドマザーへの
                強盗未遂につき
                無期懲役

                 将官は囚人を覗いてみた。マスクマンは背が高く細かった。ボロボロの服に半分引き裂かれたネクタイ。そして目と口の部分がくり抜かれた灰色の袋をかぶり、顔が見えなかった。

                 「お前がマスクマンのようだな」将官が言った。

                 「やあ、将官」彼は言った。「じっくりスピーチを楽しませてもらったよ。登場の仕方を知っているんだね。軍の訓練で習ったのか?」

                 将官はこのおかしな男を見つめた。「遊んでいる時間はない」彼は言った。「この男は独房に残しておけ」

                 将官は怒って立ち去ろうとしたが、マスクマンは必死に檻に手を伸ばして、彼に留まるよう頼んだ。

                 「待ってくれ、将官!悪かった!怒らせるつもりはなかったんだ、ただ手伝おうとしただけなんだ!確実に勝利に導く方法を知っているんだ!」

                 これを聞いて、将官は踵を返し囚人と顔を合わせた。「お前のような人間が、どうやって私のような人間を手伝うと言うのだ?」

                 「あなたはこの世界の人間ではないが、私はここの人間だからだ!」マスクマンは言った。「土地勘もあるし、事情もわかってる。あなたはとても素晴らしい兵をお持ちだが、支配するほどではない。妖精たちに立ち向かうなら、もっと大きな、もっと力を持ったものが必要になるだろう。私はどこで手に入るかを知っている!」

                 将官は興味をかき立てられたが顔には出さず、男の方に一歩近寄った。「二分やろう」彼は言った。「話してみろ」

                 マスクマンは手をこすり合わせて話し始めた。彼はとても奇妙で生き生きとしていた。そして話す時は多くの手振りを使い、たいていは話していることには関係なかった。彼の手と口は別々の事を表しているかのようだった。

                 「まずはこの世界の歴史だ」彼は言った。「ドラゴン時代、魔法の時代、そして現在のゴールデン時代に分けられる。数百年前のドラゴン時代だったころ、この世界はめちゃくちゃだった!暴君や悪の魔術師、それともちろん多くのドラゴンで溢れていた。彼らは際限なくウサギのように繁殖していた!」

                 「その歴史の授業が何の役に立つ?」将官が訊いた。彼は無駄な時間を過ごしたのではないかと腹が立ち始めた。

                 「もうすぐだ、将官」マスクマンは彼に言った。「言ったように、何でも破壊するドラゴンがどこにでもいた。そして妖精は力を合わせて食い止めた。これで彼らが力を持ち、魔法の時代に入ったんだ。妖精たちはハッピリー・エバー・アフター議会をつくり、平和をもたらした。そんなこんなだったが、ドラゴンがいなくなった今、議会の長であるフェアリー・ゴッドマザーとその仲間が管理していて誰も彼らを引き下ろすことはできない。なぜなら・・・」

                 彼は将官が文末に付き合ってくれると期待したが、マルキ将官は険しい表情を崩さなかった。

                 「ドラゴンだ!」マスクマンは不思議なジェスチャーで言った。「誰も妖精たちに対抗できない。なぜならドラゴンが必要だからだ。そして私はどこで手に入るかを知っている!」

                 マルキ将官はマスクマンが話し始めた時、左目がぴくぴくするかと思ったがしなかった。彼の言っていることに何か真実があるに違いなかった。

                 「そのドラゴンはどこで手に入るんだ?」将官は訊いた。

                 マスクマンは手を下ろし、同時に真剣な表情が顔に浮かんだ。「まず独房から出してくれ、それから教えるよ」

                 マルキ将官は彼の素早い計算高さに感心したが、この男には見た目以上のものがあるとわかっていた。そして独房の鍵を開ける前にもっと知りたいと思った。

                 「お前はどのくらいここにいる?」

                 「十年ほどさ」マスクマンは言った。

                 「それでなぜ強盗未遂で終身刑に?」将官はさらに訊いた。「もちろんこの世界だとそんな小さな犯罪でもひどく厳しい罰になるんだろうが」

                 マスクマンは面目なさそうにうなだれた。しかしそれは罪を犯したことに対してではなく、やり遂げることができなかったためだ。「盗もうとしたことが刑罰に値するんだ」彼は言った。そして将官の目を覗き込んだ。「あなたと私はとても似ている。チャンスがあれば見逃さない。そうじゃなかったら、二人ともここにはいないはずだ」

                 将官が魅力的だと思ったマスクマンの青い瞳の中には熱意があった。もしかしたらこの男は役に立つかも知れない。

                 「最後にもうひとつ」将官が言った。「どうして頭に袋を?」

                 マスクマンは控えめに微笑んだ。「あなた達がユニフォームを着るのと同じ理由だ。世に知られたくないことを隠すためさ」

                 普通はこのような状況は将官を怒らせるものだが、今回は笑みを浮かべた。マスクマンは奇妙な男であるが、将官が自分と重ね合わせられる数少ないうちの一人だ。

                 「バトン大佐」マルキ将官が言った。「この男を独房から出すんだ。ここを出たらすぐに出発の準備をして、この男にドラゴンのところへ案内させよう」

                 
                | hanno | 19:58 | comments(0) | - | - |
                【TLOS3ブログ読書会】chapter15(後半)ver1.0
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                   マザー・グースは急にアレックスの方に振り向いた。「あるいは入口が開いているなら、ほんの数分でわかるだろう」彼女は先ほどの会話を締めくくって言った。「バルコニーに行ってみよう!」

                   三人は広間を駆け下り、妖精宮殿の大バルコニーへと急いで行った。下の庭をよく見ていると、馴染みのある若者が走ってこちらへ向かっていた。

                   「コナー!」アレックスは叫んだ。彼女はコナーが庭を駆け抜ける姿を見て、幽霊でも見ているかのようにすっかり取り乱していた。本当に彼を見ているのだろうか、それともその日の不幸が幻覚を見せているのだろうか?

                   「アレックス!」コナーが叫んだ。彼は何時間も走ってきたかのように、息を切らし汗をかいていた。「話さないといけないことがあるんだ・・・」彼の声は消えていき、白目をむくとその場に倒れた。

                   すぐにアレックスはバルコニーを出て宮殿の中を通り、庭園の中のコナーの側に駆け寄った。そしてひざまずくと彼の頭を膝にのせた。マザー・グースとレッドも後を追ってきた。

                   「死んでるの?」レッドがマザー・グースの陰から訊いた。

                   「コナー、聞こえる?」アレックスは意識を失っている双子の兄に尋ねた。「聞こえるの?」

                   マザー・グースは帽子の中からスキットルを取り出すと、中の液体をコナーの顔にかけた。コナーは目を覚まし、すぐに起き上がった。

                   「わぁ!ヒリヒリする!」彼は液体を目から拭いながら言った。「何だよ?」

                   「すまない。でもこれが効くんだ」マザー・グースが言った。

                   アレックスはコナーが無事であるのを見ると、すぐに涙があふれ出た。何ヶ月も実際には会えないと思って過ごしたが、今は目の前に座っているのだ。彼女はコナーのあばら辺りに抱きつき、彼の胸で泣いた。

                   「コナー!本当にここにいるのね!誰かに会えてこんなに嬉しいのは初めてよ!」

                   彼は息切れしていたが、彼女を抱きしめ返す力は残っていた。「僕も会えて嬉しいよ、アレックス」

                   マザー・グースは二人の再会に割って入った。「お前がここにいるということは・・・」

                   「入口は開いてた!」コナーは息を切らして言った。「そして兵士、あいつらもここにいるんだ!」

                   マザー・グースは幽霊のように真っ青になった。彼女は後ろを向き、スキットルの中身を飲んだ。アレックスは何を話しているのかわからなかった。

                   「コナー、何の兵士?」彼女は訊いた。「そして何から走ってきたの?」

                   「長い話さ」コナーは言った。「その前に、別の世界から一緒に来た友達が二人いるんだ。入口を探すのを手伝ってくれた。でも彼らはまだ森のどこかにいる。走れなくなったから置いてきたんだけど、二人を捜して早く家に帰さなくちゃ」

                   「私がやろう」マザー・グースは口笛を吹いてレスターを呼んだ。間もなく大きなガチョウが宮殿の屋根の上から舞い下りてきて、彼らの側に着地した。レスターは他の者と同じように、コナーを見ると驚いた。

                   「クワァァァ!」レスターが声を上げた。

                   「やあ、久しぶりだな」コナーはレスターの長い首をさすりながら言った。

                   マザー・グースはガチョウに跳び乗ると、コナーの友人を捜すために夜空へと離陸した。コナーは息を整えるのにまだ時間がかかったが、立ち上がった。

                   フロギィは宮殿の階段の上に現れ、庭を見渡した。そして彼が見たものに驚いた。「コナーかい?」彼は息を呑んだ。「本当に?」

                   「ええ、コナーが戻ったのよ!」レッドが大きな声で言った。「窓が再び開いていたとか何とか」

                   フロギィは庭園を跳びはねて、友人にハグを送りに行った。彼はコナーがどうやって戻ってきたかは関係なかった。この日、良い何かがあったのがただ嬉しかったのだ。

                   「やあ、フロギィ」コナーは言った。「みんなに会えて嬉しいよ!」

                   「君、動揺してるみたいだけど」フロギィが言った。「何があったんだい?」

                   「何があったか話して」アレックスが懇願した。「怖くなってきたわ」

                   コナーは改めて深呼吸をし鼓動を静めてから、何が起こったかを話した。ドイツ旅行とグリム兄弟が残した警告から話し始めた。何度もアレックスと連絡を取ろうとしたが、結局マザー・グースと連絡が取れたことを説明した。グリム兄弟がどのようにしてフランス兵たちを魔法にかかった入口に閉じ込めたかを教え、コナーがブリーとエメリックの協力の下に、その入口が開いているかを確かめるためにヨーロッパを旅した話をした。そして恐ろしいことに、二百年の後、ついに何千もの兵士がランド・オブ・ストーリーの世界に到着したことを伝えた。

                   彼らは言葉を失った。このひどい週が、想像以上に過酷なものだと誰ひとりとして信じたくはなかった。

                   「まあ、なんてこと」アレックスが言った。「信じられないわ」

                   「わかるよ」コナーが言った。「大変な三日間だったんだ」

                   これを聞いて、アレックスは不思議に思った。「三日間?」彼女は確認した。「待って、舞踏会の間に連絡を取ろうとしてたって言ったわね?」

                   「ああ」コナーが何度も試したことを思い出して目をぐるりと回した。「三日間も僕と話せないくらいだから、すごく忙しかったんだろう」

                   「ごめんなさい、いろいろあって」アレックスは彼らを巻き込みたくなくて、そう言った。「でも舞踏会はもう一ヶ月前近く前よ。コナー、入口の中に何週間もいたのね!」

                   ちょうど落ち着いたコナーの鼓動が、再び速くなった。エメリックの疑いは正しかった。入口の中で時間を失ったのは兵士だけではなかったのだ。彼らが到着した時、混乱したのも無理はなかった。

                   「まずいな」コナーが言った。「それってブリーとエメリックが一ヶ月も家族と離れてるってことだよ」

                   「マザー・グースが二人を連れて来たら、あたしの部屋に行ってランド・オブ・ストーリーの本を使って家に返しましょう」アレックスは言った。「入口が再び開いているなら、できるはずよ」

                   コナーの頭に疑問がよぎった。「でもマザー・グースからなぜ入口が再び開いているのか聞いてないんだけど」彼は言った。「どうしてだか誰か知ってる?」

                   アレックスは悲しげにフロギィとレッドを見た。そして彼らは黙った。コナーは三人が何かを知っているのがわかった。彼の知らない重要な何かを。
                   「何だよ」コナーが訊いた。「他に僕の知らない何かがあるんだろう?」

                   アレックスは深呼吸をしてから伝えた。「コナー、入口が開いているのは、フロギィがカエルに戻ったのと同じ理由なの」彼女は言った。「おばあちゃんの魔法は消えているの。おばあちゃんが・・・死んじゃうから」

                   コナーは腹に一撃を受けた気分だった。彼は膝から崩れ落ち、周りの庭園に目を泳がせた。こんなことがある訳なかった。彼は大好きなこの世界を救おうと、もう一つの世界で危険な目にあってきたのに、祖母を救うことができないのがわかっただけなのだ。それは目覚めることができない悪夢の中に閉じ込められたかのようだった。

                   「おばあちゃんは死ぬわけないよ」コナーが目に涙をためて言った。「フェアリー・ゴッドマザーだもん。妖精は死なないよ・・・」

                   彼に話してきかせるのは、自分が聞くことよりも難しかった。「死ぬのよ」アレックスは涙ながらに言った。

                   「どのくらい持つの?」彼は泣き声で言った。

                   「知るすべがないわ」アレックスが言った。「エメラルダが言うには、おばあちゃんの中に魔法が残っている限りチャンスがあるの。でもおばあちゃんの魔法が消えていってるのは珍しいんだって」

                   突然、一陣の風が吹き抜け、マザー・グースとレスターが戻ってきた。彼らはブリーとエメリックを見つけ、安全に妖精王国に連れてきたのだ。二人は息を呑むような宮殿の素晴らしい庭園を見て、我を忘れていた。こんなに美しい場所は見たことがなかったのだ。

                   「わあ、こんなの滅多に見られないよ」エメリックは言った。

                   「これこそ私が期待してたものよ!」ブリーが嬉しそうに言った。

                   マザー・グースはレスターから飛び下り、二人が下りるのを手伝った。彼らは他の者たちと一緒にコナーの周りに集まった。

                   「大きなカエルだね」エメリックはフロギィが立っているのを見て言った。そしてブリーの陰に隠れた。

                   「ハーイ、アレックス!」ブリーがおどけて言った。彼女はほとんどわからなかったのだ。「覚えてないかもしれないけど、七年生の時社会学の授業で一緒だったのよ。元気そうね。素敵な宮殿だわ!」

                   「ブリー」アレックスはぼんやりと思い出して言った。「コナーが入口を捜すのを手伝ってくれてありがとう」

                   「気にしないで」ブリーは言った。「暇だから」

                   コナーは涙をためてマザー・グースを見た。「入口が開いているのは、おばあちゃんが病気だからだなんて言わなかったじゃないか」彼は言った。

                   マザー・グースは長いため息をついた。「すまない、Cドッグ。私から言うべきじゃないと思ったんだよ」彼女は言った。

                   コナーは目をそらした。「いや、責任逃れなんだろ」彼は冷たく言った。

                   マザー・グースは黙り、恥ずかしげに地面をみた。彼は正しかったのだ。ブリーとエメリックも静かになった。二人は何が起こっているのかわからなかった。

                   「おばあちゃんに会えば気は楽になる?」アレックスがコナーに尋ねた。「部屋で休んでいるわ」

                   コナーは首を振った。彼は悲しむ前に、罪悪感をどうにかしたかった。「いや、先にブリーとエメリックを家に帰したい」彼は言った。「これ以上、巻き込みたくないんだ」

                   アレックスは彼らを宮殿の中へと案内し、彼女の部屋へと階段を上った。そしてエメラルド色に金の文字が書かれたカバーの古いランド・オブ・ストーリーの本を本棚の特別な場所から取り出した。アレックスはベッドの中央にその大きな本を置いた。彼女はクリスタルの杖の先で三回軽く叩いたが、何も起こらなかった。さらに二回やってみたが同じ結果だった。

                   「どうなってるの」彼女は言った。「入口が開いているのに、どうして本はそのままなの?」

                   マザー・グースは本を取り上げ、念入りに調べた。彼女はひらめき、目が輝いた。「入口がまだ半分が閉じているからだ」彼女は説明した。「お前たちのおばあちゃんの魔法は、もう一つの世界の入口が開く分だけ消えているが、こっち側が開くほどではないんだ。片側だけ鍵がかかってない扉のようなもんだ」

                   「ってことは、ブリーとエメリックはここに閉じ込められるってこと?」コナーが尋ねた。状況は次第に悪い方向にしか行ってなかった。

                   「今のところはな」マザー・グースが言った。

                   「ちょっと待って」アレックスが部屋の全客を見て言った。ゆっくりと彼女の目は大きく開き、微笑みが浮かんだ。「それは良い知らせよ」

                   「なんで良い知らせなんだ?」コナーが訊いた。

                   「だってこっち側の入口が閉まっているなら、まだおばあちゃんに魔法が少し残っているってことよ」彼女は嬉しそうに言った。

                  | hanno | 21:07 | comments(0) | - | - |
                  【TLOS3ブログ読書会】chapter15(前半)ver1.0
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                    ほろ苦い再会


                     アレックスは祖母の手を取りベットの脇に座っていた。フェアリー・ゴッドマザーは彼女がそこに着いてからも穏やかに眠っていた。祖母は心配事などないように見えたが、あえてそう見えるようにしているのだとアレックスは知っていた。眠っている間でさえも、本心を見せるほど信頼してないのだ。何か良からぬことがあるのは、アレックスも感じ取ることができた。

                     「おばあちゃんに何があったのか教えてくれる?」アレックスが訊いた。「それともそこに座っているだけで、また自分で見つけろってこと?」

                     エメラルダとマザー・グースはベッドの反対側に座り黙っていた。レッドとフロギィもいたが、アレックスに何か出来ることがあればいいのにと思いながら、ベッドのところに立っていた。この週は特に大変な週だと証明された。

                     「おばあちゃんは、長いこととても疲れていたんだ」マザー・グースが言った。「誰にも言わないように頼まれたが、それが今日は目覚めなかったんだ」

                     「私たちも今日始めて聞いたのよ、アレックス」エメラルダが言った。「誰にも言ってなかったの」

                     「でも、疲れたってどういう意味?」アレックスはだんだん腹が立ってきた。「ただ休養が必要ってだけ?あたしに出来ることや、おばあちゃんを起こすものはあるの?それとも・・・」

                     アレックスは言葉にすることができなかった。

                     「何もできることはないと思うよ」マザー・グースは言った。

                     「死んじゃうってことなのね」アレックスはついに言った。「だったら、どうして誰も教えてくれないの?」

                     エメラルダはため息をついた。それはアレックスのためではなく彼女自身のためだった。「ええ」彼女は認めた。「フェアリー・ゴッドマザーは危篤なの」

                     涙が突然、アレックスの顔に流れた。祖母がずっと側にいるわけではないとわかっていたが、こんなに早く失うとは思ってもなかった。

                     「気の毒に」レッドが言った。

                     「私たちに出来ることがあったら、言っておくれ」フロギィが言った。

                     アレックスは何も言わなかった。もちろん出来ることはなかった。彼女をなぐさめてくれるものがあるとしたら、祖母が起きてくれることだけだった。

                     「ここに来てまだ一年と経たないのに」アレックスは涙ながらに言った。「おばあちゃんが唯一の家族なのよ。どうしてこんなことに・・・」

                     マザー・グースは話すことで、少しでもアレックスのなぐさめになればと願った。

                     「おばあちゃんはとても長く生きているんだ」マザー・グースは言った。「そしておとぎ話の世界のためにとても頑張ってきた。だがいつまでも生き続けるわけではないことを知っていたんだろう。この何世紀かの間に、仕事を引き継いでくれる者を探していたんだ。彼女は多くの弟子をとったが、お前以外は不合格だった。やっとお前が彼女の残したものを引き継ぎ、うまくやってくれることを見出したんだ。それで彼女の魂も前進することを許したんだろう」

                     これはアレックスをさらに落ち込ませただけだった。「じゃあ、あたしのせいってことね」彼女は言った。「あたしがランド・オブ・ストーリーの中に来なければ、妖精評議会に入らなければ、おばあちゃんはまだ後継者を探してて、このベッドにはいなかったのよ。あたしがおばあちゃんを殺してるんだわ」

                     「そんなことあるものか」マザー・グースが言った。「お前がおばあちゃんを救ってるって言いたかったんだ。お前がおばあちゃんに安らかに眠る自由を与えているんだよ。それは生きているものが皆もっている、その時が来たら逝く権利なんだ」

                     アレックスは聞くのが辛かった。もし全てのレッスンや合格したテストで祖母を失うのが近づくことを知っていたら、彼女はすぐに何もかも投げ出していただろう。しかしそれが祖母が望むことではないこともわかっていた。

                     「あとどのくらいもつの?」アレックスは尋ねた。「亡くなる前に目覚めるの?」

                     「それはわからないわ」エメラルダは言った。「チャンスはあるの。フェアリー・ゴッドマザーはうまく乗り越えて何百年も生きてきた・・・それは彼女の中にどのくらい魔力が残っているかによるの。でもマザー・グースに話した内容からだと、とても難しいと思うわ」

                     「それは、フロギィがまたカエルになったのと同じ理由なのね」アレックスがすべて把握し始めて言った。「おばあちゃんが亡くなる時、同じように魔力もなくなっていく。だから最近かけた魔法はゆっくり消え始めてる」

                     「その通りよ」エメラルダが言った。「そして彼女がこの世界でやってきた仕事をなくしてしまわないようにするのが、私たちの仕事なの」

                     アレックスは優しく祖母の頬に触れた。彼女はこんなにも特別な女性なのだから、どこかにまだ魔力が残っていても不思議ではない。

                     「フロギィ、喜んで人間に戻すわよ」アレックスが言った。「何回か試さないといけないかもしれないけど、できると思う」

                     フロギィは特にこの状況で感動したようすだったが、彼の答えに一同は驚かされた。「いや、いいんだ」彼は言った。「レッド、君が理解してくれるといいけど。よく考えた結果、カエルのままでいることにしたんだ」

                     これを聞いて皆びっくりした。特にレッドは。

                     「何ですって?」レッドが尋ねた。「どうして?」

                     「だって、何度人間になろうともカエルに戻されるんだ」彼は説明した。「何かあるんだと思う。それに格好良く見せようとしても、変身するたびに大変になるんだ。ずっと歩いたり、食べたり、動いたりするのに練習し直すのは骨が折れるよ。それよりひとつに決めて、そのままでいたいんだ」

                     レッドはこれを平静にとらえようと努めたが、玉座を失った直後では何食わぬ顔をすることができなかった。

                     「ごめんなさい」レッドは涙をこらえて言った。「見ためほどがっかりするつもりはないんだけど。チャーリー、あたしが王国を失ってもあなたは側にいてくれた。こんな些細なこと、あたしは支えられるってわかってるわ。すぐに慣れてくると思うの。新鮮な空気を吸ってくるから、失礼するわ」

                     レッドはフェアリー・ゴッドマザーの部屋をそのまま出た。そして彼女が扉の外で泣き出したのが聞こえた。アレックスは優しく祖母の手をベッドに置き、立ち上がった。

                     「あたしも新鮮な空気が必要だわ」アレックスは言った。

                     「私も行くよ」マザー・グースが言った。

                     「私はフェアリー・ゴッドマザーと一緒にいるわ」エメラルダが言った。

                     「私もそうするよ」フロギィがアレックスの座っていたところに座って言った。

                     アレックスが妖精宮殿の広間をマザー・グースと歩いていると、祖母のことが広まっているのがわかった。 彼女のそばを通る時、どの妖精も同情と敬意の神妙な表情をしていたのだ。

                     「コナーなしではやっていけそうにないの」アレックスが言った。「どうにかしてここにいて欲しいわ」

                     マザー・グースは広間を見渡した。二人が広間の空いている場所に着くと、すばやくアレックスを柱の陰の見えない所に引き込んだ。

                     「話がある」マザー・グースは言った。「コナーのことだ」

                     「何なの?」アレックスが訊いた。

                     「おばあちゃんが最初に具合が悪いことを話した時、私はすぐコナーに連絡したんだ」彼女は説明した。「おばあちゃんが病気だとは言わなかったが、ちょっとした使いを頼んだ。あるものを確認することをな」

                     「何を確認するの?」

                     「フロギィの魔法だけが消えかかった魔法ではないんだ」彼女は言った。「ふたつの世界の間の入口を閉じた魔法も消えるだろう。コナーにはそれを確かめてくれるよう頼んだんだよ」

                     感情のジェットコースターがアレックスの体を走り抜けた。不幸中の幸いとなり得るのだろうか?もし入口が開いていたら、コナーに再会できるだろう。

                     「いつわかるの?」

                     「まだ連絡待ちなんだ」マザー・グースは言った。「おばあちゃんの魔法が消えていくかも知れないが、少しでも残っているなら、どの魔法の方かはわからない。入口のことがわかるのは、数週間か数ヶ月か数年かかるかもしれないんだ」

                     突然、レッドが廊下へ下りてきたが、柱の陰にアレックスとマザー・グースを見つけるとストップした。

                     「レッド、どうしたんだい?」マザー・グースは尋ねた。「チャーリーが元のカエルになって悲しんでいただろう?それともまたクロウディアスが小さな妖精を飲み込んだのかい?」

                     「あたし自分に同情してバルコニーにいたら、発見したの」レッドは目を輝かせて言った。「不幸のあまり幻覚を見たのかも知れないけど、コナーが宮殿に向かって走っているのを見たの!」

                    | hanno | 21:07 | comments(0) | - | - |
                    【TLOS3ブログ読書会】chapter14 ver.1.0
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                      兵士の到着


                       コナーは光の世界を回っていた。とても眩しく、ほとんど何も見えなかった。そして周りの吹き抜ける風の音以外は、自分の声さえも聞こえなかった。やがてブリーやエメリックが飛んで行くのを目にしたが、手を伸ばしてみても届かなかった。コナーには二つの次元の狭間にいることがわかった。二年前に妹とランド・オブ・ストーリーの中に入った時にここにいたのだ。ただその時よりも到着に時間がかかっているように思えた。

                       コナーは閃光を目にし何かが彼をかすめたのを感じた。それはカーテンの中を落ちていくようだった。そして気がついてみると、かすんだ夜空を見上げて仰向けに倒れていたのだ。彼は少しの間そのままの状態で感覚が戻るのを待っていた。

                       さらに二つの閃光が近くで見られ、地面にドサッと落ちたようだった。ブリーとエメリックがコナーの側に着地したのだ。コナーは二人を確認するために身を起こすと、二人は彼と同じように困惑していた。

                       「まあ、これで入口が間違いなく開いていることがわかったね」コナーは言った。

                       ブリーは座ろうとして身構えた。「いつもこんな激しい着陸なの?」と言った。

                       「いいや。どうしてこんな激しかったかわからないよ」

                       エメリックはフラフラしてうまく話せなかった。「ホーエンシュヴァンガウじゃないよね」と彼は言って、頭を上下させた。

                       コナーは立ち上がると周りの森を見渡した。木の背は高く、枝は広く空に向かって広がっていたが、葉はほとんどなく死んでいるように見えた。霧がかかっていたので、遠くまでは見えなかった。

                       ブリーも立ち上がった。「これなのね?」と彼女が訊いた。

                       「一部だよ」コナーが言った。「ここがどこかわからないけどね」

                       エメリックは立ち上がろうとしたがうまくいかなかった。コナーとブリーは彼を近くの木まで引きずり、木の幹にもたれさせた。

                       「どっちか僕がどこにいるのか教えて?」エメリックが尋ねた。「そしてノイシュバンシュタインに何があったの?」

                       「秘密の捜査員より格好いいことがあるっていったでしょ」ブリーがいたずらっぽく言った。

                       「僕らはおとぎ話の世界にいるんだよ」コナーが説明した。「ノイシュバンシュタイン城の中に隠されている入口を通ってきたんだ」

                       エメリックは大きな驚いた目で周りの森を見渡した。「おとぎ話の世界?」彼は言った。「スノー・ホワイトとかスリーピング・ビューティーとか、ラプンツェルの?」

                       「ここにみんないるよ」コナーが言った。「僕のおばあちゃんと妹もここに住んでいるんだ。ここと僕らの世界の間の入口はずっと閉ざされていたんだけど、また開いてるかどうかを確かめて欲しいって友達に頼まれたんだ。だからここに来たってわけさ」

                       エメリックはたくさん質問がありすぎて、何から聞くべきなのかわからなかった。「どうして確かめるように頼まれたの?」これが彼の選んだ質問だった。

                       「悪いやつらが入れないのを確かめるためさ」コナーが言った。ブリーは振り向き周りの森を見た。「そう言えば、私たちがおとぎ話の世界に入口から入れたってことは、フランス兵がいるってことじゃ・・・」

                       突然、辺りで閃光が見えた。光はそれぞれなにかとても重々しく宙に現れ、地面に打ちつけた。ブリーはそのほとんどが人だとわかると悲鳴を上げた。コナーは物や人が彼らの上に落ちてくるんじゃないかと心配し、隠れる場所を探した。

                       「いそげ!その木に登るんだ!」彼は叫んだ。彼らはエメリックを立ち上がらせて木まで走ると、出来るだけ高い所まで登った。木の上からは何が起こっているのかよく見ることができた。光の嵐が森を一掃し、砲丸、馬車、馬、剣、機関銃、兵士たちを降らせているかのようだった。

                       「兵士だ!」コナーは二人にささやいた。「ここにいるんだ!」

                       兵士の嵐は静まる気配がなかった。三人の子供たちは、もやのかかった数マイル先での閃光を木の上から見ていた。嵐が大きくなると、空から降ってくる何百もの人や装備の破片が何千にもなり、近くに落ちてくる馬車や大砲や馬が、危うく多くの兵士を押しつぶしそうになった。

                       やっと嵐は収まり、森の周辺で鳴り響いていた轟音は止まった。何千ものうめき声やうなり声が今度は聞こえてきた。兵士がけいれんし地面で転がっているのを見るたび、コナー達は震え上がった。兵士の多くは頭を抱えて苦しむか嘔吐していた。

                       兵士は皆、黒いブーツに白いズボンを履き、そして青いジャケットを着ていた。階級を表すカラフルな飾りや羽根をつけている者以外は、シンプルな帽子がほとんどだった。彼らは立ち上がろうとせず、しばしの間は地面に座っていた。

                       もやの中から一人の男が現れた。彼は小柄で大きくカーブした帽子をかぶっていた。そして苦々しい様子で苦しんでいる兵士を見渡した。コナー達の隠れている木に近づくとムスクの香りが広がった。コナーもブリーも彼に会ったことはなかったが、彼がマザー・グースが忠告したジャッキー・マルケ将官に違いないと思った。

                       将官は他の兵士より神経が図太いようで、この場に現れても何ともなかった。「Debout! 」彼は地面で苦しんでいる男たちに叫んだ。「Vous etes une honte pour la France!」

                       「なんて言ったの?」コナーは二人に小声で訊いた。

                       「『立て。フランスの恥さらしだ』って言ったんだ」エメリックが訳した。

                       「フランス語できるの?」コナーが尋ねた。

                       「ドイツ語と英語、フランス語、デンマーク語ができるよ」

                       コナーは感心した。「すごいな。僕は英語でもまだ苦労してるよ」

                       ブリーが手で二人の口を覆った。「かくし芸を披露してる場合じゃないのよ」彼女が厳しく言うと彼らは黙った。

                       多くの兵士が将官の命令通りによろめき立った。エメリックはすばやく彼らの言うことをコナーとブリーに訳した。

                       「男らしく歩いてしっかりしろ」将官は吐き気を催している部下に言った。「これからの戦いとは比にならんぞ」

                       もやの中から別の男が現れた。彼はとても背が高くヒゲをたくわえ、将官と同じようにつばがカーブした帽子をかぶっていたが、横向きのものだった。

                       「マルキ将官、おめでとうございます。今、到着しました」バトン大佐が言った。

                       「そのようだな」将官は大きな声で言った。「だが我々がどこにいるのか正確にわかるまで、めでたいことは何もないぞ」

                       二人の兵士が森を抜けて将軍と大佐の元へと駆け寄った。彼らはとうてい兵士に見えない男を引きずっていた。
                       
                       「マルキ将官!バトン大佐!」デ・ランゲ大尉が言った。「何者かを見つけました!」

                       「我々が到着した時に、この男は森を歩いていました」レンバート中尉が言った。 

                       彼らは弱った老人をマルキ将官の前の地面に突き飛ばした。老人は怖がり、すっかり怯えきって周りの兵士を見渡した。「あなたがたが皆、空から降ってきたのを見たんです!」彼は震えながら言った。「どんな魔法なんです?」

                       将官は老人の困惑に付き合っている時間はなかった。「ここはどこか言うんだ。そうすれば命は助けてやる」彼は言った。

                       「どうしてまた・・・、イースタン王国でございます」老人は言った。

                       「ではこのあたりで、木のほかに何がある?」将官は訊いた。

                       「妖精王国との国境が西にありますが、ピノキオ牢獄がもっと近くにあります。すぐ東に行ったところです」

                       将官は興味をそそられた様子で男の方へ近づいた。「牢獄だと?」彼は言った。「どんな犯罪のための牢獄なんだ?」

                       「全王国のもっとも悪質な犯罪です」年老いた男は将官が知らなかったことに驚いて言った。

                       マルキ将官の表情がやわらぎ、不気味な笑顔が口角に表れた。「君たち」彼は兵士に向かって言った。「神は我々に微笑んだ!すぐにおとぎ話の世界は我々の手中だ!ナポレオンも誇らしいだろう!」

                       兵士たちは力を振り絞って喜んだ。

                       「世界を征服するためにここへ?」男は尋ねた。「どういった方々なんでしょう?」 

                       将官は目を見るために身をかがめた。「残念ながら、お前は知りすぎた」彼は言った。「処分しろ」

                       年老いた男は叫んだ。「やめてください!家族がいるんです!」懇願したが、効果はなかった。将官には情けなどなかったのだ。デ・ランゲ大尉とレンバート中尉はもやのかかった森へと男を引きずっていき、彼の叫び声が木々の間にこだました。ほどなく銃声が聞こえると、森は再び静まり返った。

                       ブリーは声を出さないように口を覆わなくてはならなかった。エメリックは悪夢を見ているかのように森を見渡した。コナーは深刻な面持ちで二人を見た。できるだけ静かにしていないと、次は彼らの番なのだ。

                       「バトン大佐、我々はすぐに編成しなくては」将官が指示した。「半分は森に残って野営を設置し、残り半分は牢獄へ行くぞ。夜明けに奇襲する」

                       「牢獄で何をするんでしょう?」バトンが尋ねた。

                       「増員するのだ」将官は言った。

                       彼らは来た方向へと歩いて戻り、もやの中へと消えて行った。他の兵士は散らばった武器を集め、馬車に馬をつなぎ、森の中へとついて行った。コナー達はそこにぽつんと残された。

                       コナーは木を下り、まだ静かにしているように合図した。周りを確かめると下りてくるように二人にサインを送った。

                       「かわいそうなおじいちゃん」エメリックは涙でいっぱいの目で言った。「将官があんなことするなんて!誰か助けが必要だったら、映画の中のスーパーヒーローのように助けられるんだってずっと思ってた。でも、たぶんそうじゃないよね」 
                       ブリーは同情して彼の肩に手を置いた。

                       コナーは将官が言ったことについて考えると鼓動が速まった。「彼が兵士に言ったこと聞いたかい?」二人に尋ねた。「ナポレオンも誇りに思うだろうって」

                       ブリーも同じことを考えていた。「ええ、聞いたわ」彼女は言った。「ナポレオンは、確か二百年前に死んでる。彼らはどのくらい閉じ込められていたか知らないのよ」

                       「じゃあ、僕たちはどのくらいあそこにいたかわかるの?」エメリックが訊いた。

                       コナーとブリーは互いの顔を見ると、背筋がぞっとした。彼らも自分たちが思っているより長く入口に閉じ込められていたのだろうか?知っている誰かを出来る限り早く見つけなければならなかった。

                       コナーは二人を危険にさらしたことに罪悪感を感じて、涙がでそうだった。二人を早くランド・オブ・ストーリーから出すべきだとわかっていた。

                       「正直言って、やつらは本当に危険だ」彼は言った。「そして今すぐに妖精王国に行って、兵士がここにいることを友達に教えないといけない。宮殿に着いたら、君たちを帰す方法を見つけるって約束するよ」

                       ブリーとエメリックはうなずいた。

                       「じゃあ、ついて来て」コナーが言った。「妖精王国に向かって、急いで西に行かなくちゃ」
                      | hanno | 07:53 | comments(2) | - | - |

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